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東京地方裁判所 平成9年(ワ)9930号 判決 1999年3月23日

原告

佃克彦

原告訴訟代理人弁護士

青木護 赤松範夫 梓澤和幸 飯田正剛 五十嵐裕美

井澤光朗 泉澤章 伊藤和子 井上聡 岩本朗

上柳敏郎 内田雅敏 梅澤幸二郎 大江京子 大森秀昭

岡崎敬 尾林芳匡 海部幸造 加納小百合 木村晋介

金喜朝 蔵冨恒彦 栗山博史 黒岩哲彦 児玉晃一

児玉勇二 小林容子 近藤博徳 齊藤園生 坂井眞

坂口禎彦 坂元雅行 佐藤仁志 澤藤統一郎 塩田三紀

幣原廣 嶋田久夫 清水勉 下林秀人 杉本朗

鈴木義仁 須納瀬学 諏訪部史人 平哲也 高山俊吉

竹内浩史 立松彰 谷脇和仁 千葉肇 寺町東子

土肥尚子 富永由紀子 中西一裕 中野和子 西村正治

仁比聰平 二瓶和敏 則武透 芳賀淳 羽鳥徹夫

萩原猛 原和良 樋渡俊一 深堀寿美 穂積剛

松浦信平 村田智子 村山裕 毛受久 森田明

山本啓二 米倉勉 渡邉彰悟 大槻純生 岡内真哉

小倉京子 坂本団 山内一浩 柴垣明彦 関聖武田純

田島浩 田中宏明 谷合周三 中根秀樹 堀晶子

堀敏明 梶山公勇 斎藤利幸

被告

右代表者法務大臣

陣内孝雄

右指定代理人

戸谷博子

外四名

主文

一  被告は、原告に対し、三五万円及びこれに対する平成九年四月二三日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は三分し、その一を被告の負担、その余を原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

被告は、原告に対し、一二六万円及びこれに対する平成九年四月二三日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

本件は、出入国管理及び難民認定法違反の公訴事実により起訴されて勾留中の刑事被告人の弁護人であった原告が、右被告人の余罪として殺人被疑事件の任意捜査を担当していた検察官により、右被告人との接見を妨害されたとして、被告国に対して国家賠償法一条一項に基づき損害賠償を請求した事案である。

一  争いのない事実等(証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる前提事実も含む。)

1(一)  平成九年三月八日(以下同年の日付については、年表示を省略する。)から行方不明であったW(当時三九歳)が、同月一九日、東京都渋谷区円山町所在のアパートで変死体として発見され、警視庁渋谷警察署(以下「渋谷署」という。)に設置された特別捜査本部により、殺人事件としてその捜査が開始された(以下「本件殺人事件」という。)。

(二)  G(以下「G」という。)は、ネパール国籍を有する昭和四一年生まれの男性である。

渋谷署は、Gを本件殺人事件の参考人として事情聴取したところ、同人がいわゆるオーバーステイであるとの疑いを持つに至ったため、三月二三日、同人を出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)違反容疑で逮捕した。

Gは右逮捕の後、渋谷警察署留置場(以下「渋谷署留置場」という。)において勾留され、三月三一日、入管法違反行為(不法残留)を公訴事実として起訴された(以下「入管法違反被告事件」という。)。

Gは、右起訴後も渋谷署留置場において勾留され、本件殺人事件について捜査機関から取調べを受けた。

(三)  原告は、東京弁護士会所属の弁護士であり、Gの依頼により、四月一三日、Gに対する入管法違反被告事件について同人の弁護人となった。

Gに対しては、三月三一日の起訴時に神田安積弁護士(以下「神田弁護士」という。)が、四月一三日に原告と共に神山啓史弁護士(以下「神山弁護士」という。)が、それぞれ同人の入管法違反被告事件について弁護人に就任した。

(四)  東京地方検察庁(以下「東京地検」という。)の地下同行室内に三部屋の弁護人接見室が設置されている。右弁護人接見室の利用時間は、午前一〇時四〇分から午前一一時四〇分までと午後〇時四〇分から午後三時三〇分までとされている。

(五)  Gは、四月二二日当時、本件殺人事件については逮捕、勾留等の身体の拘束を受けていなかった。

四月二二日当時、捜査機関からGに対して、刑事訴訟法三九条三項に基づく接見指定はされていなかった。

(以上、争いのない事実、弁論の全趣旨)

2  四月二二日の事実経過

(一) Gは、当時東京地検刑事部本部事件係の検察官検事であったE検事(以下「E検事」という。)の指示により、四月二二日午後一時三〇分(以下同日の時刻については、日付の記載は省略する。)ころ、東京地検に押送された。なお、右押送の方法は単独押送でなく一般押送であった。

E検事は、午後一時四〇分ころ、自らの執務室である東京地検五〇二号室(以下「E検事室」という。)において、ネパール語の通訳人を介して本件殺人事件についてGの取調べを開始した。

右取調べは結局、午後四時ころまでほぼ間断なく続けられた。

(以上、乙二、弁論の全趣旨)

(二) 原告は、午後二時一〇分ころ、渋谷署に行き、受付の男性に対して、Gとの接見に来た旨告げた。受付の男性は、原告に対し、Gは東京地検に押送されている旨返答した。

原告は、午後二時一二分ころ、入管法違反被告事件の起訴検事であった東京地検の北見映雅検事に電話したところ、右北見検事から、現在Gの担当はE検事だと思う旨の返答を受けた。

原告は、午後二時一三分ころ、渋谷署内から東京地検のE検事あてに電話をしたところ、最初にE検事係の立会事務官である奥山美能吏検察事務官(以下「奥山事務官」という。)が電話に出て応対した。次にE検事が電話に出て原告に応対し、「取調べ中であるので、後日あるいは後刻電話して欲しい。」と述べて、電話を切った。

(以上、争いのない事実、乙二)

(三) 右電話の後、神田弁護士が東京地検のE検事に電話し、Gを東京地検で取り調べているか等と問い合わせたところ、E検事はやはり取り調べ中なので後で電話するように言って電話を切った(争いのない事実)。

(四) 原告は、右(二)の電話の後、東京地検に向かい、午後二時三五分ころ、東京地検前に到着した。そして、神田弁護士に電話をして、神田弁護士がE検事と電話した際のやり取り等について報告を受けた。

原告は、午後二時四六分ころ、東京地検の受付で、受付の男性に対し、「E検事と会いたい。」と告げた。

受付の担当官である青山俊哉検察事務官(以下「青山事務官」という。)は、「検察官に佃弁護士が面会です。」とE検事に電話で連絡を取ったところ、E検事は青山事務官に対し、「現在、取調べ中であり、面談に応じられないので帰ってもらうように。」と指示したので、青山事務官は原告に対し、「E検事は取調べ中で会えない。」と伝えた。

原告は、青山事務官に対して、「その現在取調べ中の人の弁護人が私である。その人に接見をしに来た。」などと述べた。

それから、原告と青山事務官はE検事室のある五階に向かった。

(以上、争いのない事実、甲六、七、乙二、四、六)

(五) 青山事務官は、原告を五階の待合室で待たせると、原告の面会票を持ってE検事室を訪れた。

E検事室から奥山事務官が出てきて青山事務官に応対した。

青山事務官が奥山事務官に対し、「弁護士が執拗に抗議をする。」と告げると、奥山事務官は「取調べが済むまで待つなら会う。」等と返答した。

青山事務官は、原告のいる待合室に戻り、原告に対し、「E検事は取調べが終わったら会わせると言っている。」と述べた。

それから、青山事務官は、一階の受付で上司の守衛副長からこの件を刑事事務課に引き継ぐよう指示を受けたので、五階の刑事事務課に行って、そこでこれまでの経過を説明した。

青山事務官に応対した刑事事務課の事務官は、青山事務官に対し、「刑事事務課の係長が不在のため、しばらく待って欲しい」と言った。

青山事務官は、刑事事務課でそのまま五分ほど待ったが、刑事事務課の松田辰男係長(以下「松田係長」という。)が戻って来なかったため、原告のいる待合室に戻り、原告に対し、「刑事事務課の係長が応対するから、しばらく待ってもらいたい。」と述べて、一階の受付に戻った。

原告が東京地検の受付を訪れてから、青山事務官が最後に一階受付に戻るまで、約一〇分位が経過した。

(以上、争いのない事実、乙六)

(六) 青山事務官が去った後誰も原告の所へ来なかったため、午後三時一〇分ころ、原告は刑事事務課の部屋へ行った。

原告は、刑事事務課において原告に応対した木村昇一検察事務官(以下「木村事務官」という。)に対し、「現在、E検事によって、被告人の起訴後の取調べが行われている。E検事は、取調べを理由に、会わせようとしない。事務の然るべき人を通して、E検事と話をしたい。」と述べた。

木村事務官は、「上司の指示を仰ぎます。待合室で待っていて下さい。」と答えた。

原告は一旦待合室に戻ったが、それから約一〇分後、再び刑事事務課に行き、木村事務官に対して、「まだ結論が出ないのか。こうしているうちにも取調べが進み、署名してしまうかもしれない。署名してしまったら、私が来た意味がない。なぜ被告人の取調べができるのだ。任意といっても、外国人である被告人はその意味を理解できないだろう。あなたに言ってもしようがないが、早くしてくれ。」と述べた。

午後三時二〇分ころ、松田係長が刑事事務課の部屋に戻ってきた。

そして、松田係長は、原告の申出についてE検事に指示を仰ぐためにE検事室に向かった。

その後、原告の催促により木村事務官もE検事室に向かい、木村事務官は松田係長と共にE検事室前の廊下でE検事の指示を待った。

(争いのない事実、乙五)

(七) 原告は、午後三時四〇分過ぎころ、E検事室にE検事を訪ね、E検事室のドアの前でE検事と面会した。

E検事は原告に対し、「再三取調べ中で面談には応じられないと回答しているのに、執務室まで押し掛け、面談を求めるのは法曹としての常識を逸脱している。現在、面談には応じられないので退去するように。」などと述べた。

原告はE検事に対し、「任意の取調べだというのならどうして弁護人がGさんに会えないのですか。私は弁護士としてGさんに余罪取調べを受ける意思があるのかどうか確認する権利があります。Gさんに接見させて下さい。」などと述べた。

それからE検事はE検事室のドアを閉めようとし、原告は閉められないようにドアを押さえたが、結局、E検事はドアを押し返して閉め、ドアに鍵をかけた。

(以上、争いのない事実、甲七、乙二)

(八) 午後四時ころ、E検事がE検事室から出てきて、E検事室前の廊下にいた原告に対して、「話があるので会議室で待っていて下さい。」と言った。

E検事は、五階の会議室において、原告に対し、「それでご要件は。」と言った。

それに対して原告は、E検事に対し、「Gさんに用があるのであって検事に用はない。」と答えた。

(以上、争いのない事実、甲七、乙二)

(九) E検事は、右原告との話を済ませた後、E検事室に戻り、まもなくGの取調べを終えた。

その後Gは、渋谷署員に引き渡されて押送され、午後四時三〇分ころから午後四時三五分ころの間に、渋谷署に到着した。

(以上、乙二、三)

二  争点

1  E検事により原告の接見交通権が違法に侵害されたか否か

(原告の主張)

(一) 原告による接見申出の有無

四月二二日、Gの弁護人である原告は、東京地検のE検事に対し、Gとの接見を繰り返し申し出た。

(二) 原告の接見交通権

原告は、入管法違反の公訴事実で起訴されたG被告人の弁護人としてGとの接見を求めたものである。

そして、接見交通権は身体を拘束された被疑者、被告人との外界との唯一の風穴であるから、接見では証拠隠滅、逃亡に関すること以外のあらゆることについて話されるのは当然である。本件における原告とGとの接見においても、公訴提起のなされている入管法違反被告事件についての打ち合わせのみならず、他の件についても話がなされるのはもちろんであり、任意捜査の対象となっていた本件殺人事件の取調べに対する被告人の態度についてアドバイスをなすことも原告の接見交通権の内容として当然のものである。

(三) E検事の行為の違法性

原告から接見申入れを受けたE検事としては、直ちにGに対する取調べを中止し、原告とGとの接見を実現させなければならなかった。本件の場合、東京地検内に接見室があるので、E検事は、直ちにこの接見室を使用して原告とGとの接見を実現させるべきであった。もっとも、Gが原告と接見する前に取調べを終えたいから接見を先に延ばすと意思表示した場合に限っては、接見よりも取調べを優先させることができるものと思われるが、そのためにはE検事はGに原告が接見に来ている旨を告げて、同人の判断を求めるべきであった。

ところが、本件ではE検事は右のような措置をとることなく、Gに対する本件殺人事件の「任意取調べ」を続けて、原告とGとの接見を妨害したのである。右接見妨害は原告の接見交通権(憲法三四条、刑事訴訟法三九条一項)を侵害する違法な行為である。

(被告の主張)

(一) 原告の接見申出の有無

四月二二日における原告の一連の要求行為は、Gとの接見の申出ではない。それは、起訴後の取調べを許さないとの原告の独自の見解に基づき、E検事によるGの余罪(本件殺人事件)取調べを阻止する目的でE検事との面会を求めたものであった。

すなわち、原告が渋谷署からE検事あてに電話した際に、原告はE検事に対しても奥山事務官に対しても「Gと会いたい」旨の申出はしていないし、E検事は神田弁護士らからの電話でも原告にGとの接見をさせるようにとの要求を受けたことはない。

また、原告が東京地検に赴いた際にも、E検事との面会を果たすまでの間、原告は被告人Gの弁護人であるとして明確な接見要求行為を行ってはいない。

更に、原告がE検事とE検事室前において最初に面会したときも、原告が申し出たのはE検事との面談であったことは明らかである。最初に面会した際の原告の発言の中に「Gさんに会わせて欲しい。」という発言があったとしても、それは余罪取調べをしているGについて取調べ受忍意思があるのか確認する権利があるという独自の見解に基づいた発言であり、原告が当該余罪たる被疑事件についての弁護人ではないことからもその発言は接見の申出と見ることはできない。

当時、原告、神田弁護士及び神山弁護士の三名は、入管法違反事件で起訴されたGの弁護人として選任された後、毎日交替でGとの接見を行っていたが、Gの入管法違反被告事件は不法残留事件であって、事案の内容は複雑なものではないことからすると、右事件の公判準備のためだけに三名の弁護人が交替で毎日接見に行っていたとは考えにくい。むしろ、原告ら弁護人は、Gがいわゆる東電OL殺人事件の被疑者として捜査の対象となっていることを知って、Gを右余罪について取調べることを許さないという独自の見解に基づき、Gの取調べが行われていないかどうかを監視することを主目的として連日接見を行っていたと見るのが自然である。

すなわち、原告は、それまで出房を拒否して余罪の取調べに応じていなかったGが東京地検に押送されて検察官による余罪事件の取調べが行われていることを知るや、直ちに東京地検に赴き、東京地検に到着後は「調べが進んで、署名をしてしまうかもしれない。署名をしてしまったら私が来た意味がない。」などと発言して、執拗に取調べ検事であったE検事との面会を求めるなどしてその取調べを妨害し、E検事との面会を果すや、今度は、Gの被疑事件については、弁護人でも弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(以下「弁護人等」という。)でもなかったにもかかわらず、かつ、通訳人も帯同していないのに、Gに取調べに応ずる意思があるかを直接確認するとして、余罪の取調べの中止を求めたものである。

したがって、原告が被告人との接見要求であった旨主張する本件における原告の要求行為の実態は、当該被疑事件について弁護人等でなかった原告が独自の考えに基づいて、適法に行われていた検察官による余罪についての任意取調べを中止させようとしたものに他ならない。

原告は、入管法違反被告事件の被告人としてのGとの面会を求めたとか、被告人の弁護人として余罪捜査についてのアドバイスをしようとするものだった等を主張するが、原告が東京地検に赴いた際に、入管法違反被告事件の公判準備等は全く念頭になかった。そもそも原告は、日本語に通じないGと接見するのであれば必要不可欠となる通訳人すら同行していなかったのであり、Gに理解できるように法的アドバイスをしようとしていたことは考えられない。

(二) 原告の接見交通権

(1) 原告には、本件殺人事件に関する事項を目的とした接見交通権はない。

一般に刑事訴訟法三〇条所定の弁護人の選任は事件を単位としてなされるべきものであるから、例え被告事件の弁護人であっても、右被告事件と全く関連性のない余罪に関しては、右余罪被疑事件の弁護人として選任されておらず、また、弁護人選任権者からの依頼も受けていない者に接見交通権は認められないというべきところ、本件では、被告事件の弁護人である原告が行う接見内容が、被告事件と関連性のない余罪たる本件殺人事件の取調べに係るものであり、被告事件についての接見を予定したものでないことは客観的に明白であるから、右事件単位の原則を修正すべきではなく、したがって、本件の原告には刑事訴訟法三九条一項所定の接見交通権は否定されるというべきである。

(2) 一般に、捜査機関が被告人を起訴されていない余罪について取り調べることは、被疑者ないし参考人の取調べたる本質を持つものであるから、取調べそのものが禁止されるわけではなく、余罪の取調べは何ら違法ではない。

原告は適法に行われていた検察官の任意取調べを強引に妨害した上、接見交通に藉口して取調べの中止を求めたものであって、その行為の経緯、目的、態様に照らし、権利濫用というべきものである。

(三) E検事の行為の違法性

原告が被告人Gとの「接見」を初めて申し出たのは、原告がE検事とE検事室前において最初に面会した時であるところ、結局、その後E検事はGの任意取調べを切り上げ、Gは午後三時五〇分には渋谷署員に引き渡され、接見設備のある渋谷署に押送されているのである。

突然の接見要求に対してそれを実現させるためには一定の時間が必要となることに照らせば、原告の「接見」要求後Gを接見設備のある渋谷署に押送するまでの時間の経過は、接見を実現させることに不可避に伴う本来的制約の範囲内のことであり、原告の「接見」申出に対するE検事の右所為は何ら原告の権利を侵害するものではない。

なお、東京地検下の接見室の利用時間は午後三時三〇分までであるから、E検事が原告から「接見」の申出を受けたときには、既に接見室が利用できない時刻になっていた。

2  原告の損害等

(原告の主張)

(一) 原告は、E検事の違法行為により、何ら問題なくできるはずのG被告人との接見を妨害されたため、同人に対する弁護活動に著しい支障を受けたばかりか、その後に予定していた他の事件の処理に支障を来し、多大な精神的苦痛を被った。そして、その損害は少なくとも一〇〇万円を下らない。また相当因果関係にある弁護士費用は、日本弁護士連合会報酬基準に照らせば、二六万円である。

(二) 被告は、本件殺人事件の捜査に関し、東京地方検察庁検察官検事であるE検事を使用して、右事件の捜査を遂行させ、もって公権力の行使に当たらせていたものである。

よって、被告は国家賠償法一条一項に基づき、右(一)の原告の損害を賠償する責任を負う。

第三  争点に対する判断

一  争点1(E検事により原告の接見交通権が違法に侵害されたか否か)について

1  原告の接見申出の有無

(一) 被告は、四月二二日における原告の一連の要求行為は、接見の申出ではなかった旨主張するので、この点につき検討する。

前記争いのない事実等に加えて証拠(原告本人、甲六、七)及び弁論の全趣旨によれば、四月二二日、原告がE検事室前でE検事と最初に面会する以前までの事実経過に関して、以下の事実が認められる。

(1) 原告は、午後二時一三分ころ、渋谷署内から東京地検のE検事あてに電話をし、奥山事務官及びE検事と概要左のような会話をした。

奥山事務官「E検事は取調べ中である。」

原告「Gさんがそちらに押送されていると聞いている。Gさんはそちらにいるのか。」

奥山事務官「いる。」

原告「E検事は現在Gさんの取調べをしているのか。」

奥山事務官「そうではない。」

原告「Gさんは誰が取り調べるのか。」

奥山事務官「未定である。」

原告「Gさんと接見がしたい。」

奥山事務官「……E検事に替わります。」

E検事「今取調べ中なので話はできない。後日あるいは後刻電話して欲しい。」

原告「私はGさんに接見がしたいのだ。あとでは意味がない。」

右のような会話の後、E検事は一方的に電話を切った。

(2) 神田弁護士は、午後二時二〇分ころ、E検事に電話して、E検事と概要左のような会話をした。

神田弁護士「弁護士の神田ですが、Gにすぐ会いたい。」

E検事「今、取調べ中なので、だめです。」

神田弁護士「本人は取調べを受けないと言っているはずだ。」

E検事「いや、本人は任意で取調べを受けている。いろいろ話をしていますよ。」

神田弁護士「起訴後の取調べをするのはおかしい。すぐに接見をさせて欲しい。」

E検事「任意で聞いているから問題はない。先生の意見はわかるが、会わせることはできない。とにかく調べ中なので、電話を切らせていただきます。」

右のような会話の後、E検事は電話を切った。

更に、神田弁護士は、午後二時三〇分ころ、再びE検事に電話して、E検事と概要左のような会話をした。

神田弁護士「検察官はさきほど任意で取調べをやっているとおっしゃったが、本当に任意なのか。」

E検事「もちろん任意でやっている。私はいつも任意で取調べをしている。」

神田弁護士「それならば、本当に任意で取調べをしているのかを、被告人と接見して確認させて欲しい。」

E検事「だめです。任意かどうかは検察庁の方で確認しています。」

神田弁護士「任意というのなら、私に確認させても何の問題もないではないか。任意の確認にはそんな時間はかからないはずだ。」

E検事「とにかく先生には会わせることはできません。取調べ中なので電話を切ります。」

神田弁護士「検察官、何とかならないのか。」

E検事「だめです。切ります。」

右のような会話の後、E検事は電話を切った。

(3) 原告は、右(1)の電話の後東京地検に向かい、午後二時三五分ころ、東京地検前に到着した。そして、神田弁護士に電話をして、神田弁護士がE検事と電話した際のやり取り等について報告を受けた。

原告は、午後二時四六分ころ、東京地検の受付で、受付の男性に対し、「E検事と会いたい。」と告げた。

受付の担当官である青山事務官は、「検察官に佃弁護士が面会です。」とE検事に電話で連絡を取ったところ、E検事は青山事務官に対し、「現在取調べ中であり、面談に応じられないので帰ってもらうように。」と指示したので、青山事務官は原告に対し、「E検事は取調べ中で会えない。」と伝えた。

原告は、青山事務官に対して、「その現在取調べ中の人の弁護人が私である。その人に接見をしに来た。」などと述べた。

それから、原告と青山事務官はE検事室のある五階に向かった。

(4) 青山事務官は、原告を五階の待合室で待たせると、原告の面会票を持ってE検事室を訪れた。

E検事室から奥山事務官が出てきて青山事務官に応対した。

青山事務官が奥山事務官に対し、「弁護士が執拗に抗議をする。」と告げると、奥山事務官は「取調べが済むまで待つなら会う。」等と返答した。

青山事務官は、原告のいる待合室に戻り、原告に対し、「E検事は取調べが終わったら会わせると言っている。」と述べた。

それに対し原告は、「それでは全然意味がない。Gさんは起訴後の身であり、私はGさんと接見に来たのだ。弁護人である私を被告人であるGさんに会わせないことなんてできないはずだ。E検事は任意に取調べているのだから問題ないと言っているようだが、取調べが任意かどうかは確認しなければわからないではないか。E検事と直接話をしたい。」と答えた。

それから、青山事務官は、一階の受付で上司の守衛副長からこの件を刑事事務課に引き継ぐよう指示を受けたので、五階の刑事事務課に行ってそこでこれまでの経過を説明した。

青山事務官に応対した刑事事務課の事務官は、青山事務官に対し、「刑事事務課の係長が不在のため、しばらく待って欲しい。」と言った。

青山事務官は、刑事事務課でそのまま五分ほど待ったが、刑事事務課の松田係長が戻って来なかったため、原告のいる待合室に戻り、原告に対し、「刑事事務課の係長が応対するから、しばらく待ってもらいたい。」と述べて、一階の受付に戻った。

原告が東京地検の受付を訪れてから、青山事務官が最後に一階受付に戻るまで、約一〇分位が経過した。

(5) 青山事務官が去った後に誰も原告の所へ来なかったため、午後三時一〇分ころ、原告は刑事事務課の部屋へ行った。

原告は、刑事事務課において原告に応対した木村事務官に対し、「現在、E検事によって、被告人の起訴後の取調べが行われている。E検事は、取調べを理由に、会わせようとしない。事務の然るべき人を通して、E検事と話をしたい。」と述べ、原告がGの弁護人であること、Gはオーバーステイの起訴後の勾留中であること、そのGに原告が接見に来ていること、それにも拘わらずE検事が今Gの取調べをしており原告に会わせようとしないこと及びE検事は私と話をしようとすらしないこと等を説明した。

それに対し木村事務官は、「上司の指示を仰ぎます。待合室で待っていて下さい。」と答えた。

原告は、それから待合室に戻ったが、一〇分位が経過しても木村事務官から連絡がなかったため、再び刑事事務課に行き木村事務官に対して、「まだ結論が出ないのか。こうしているうちにも取調べが進み、署名してしまうかもしれない。署名してしまったら、私が来た意味がない。なぜ被告人の取調べができるのだ。任意といっても、外国人である被告人はその意味を理解できないだろう。あなたに言ってもしようがないが、早くしてくれ。」と述べ、今誰がどこで何をしているのかを問い合わせた。

それに対し木村事務官は、「検事には話はしてあります。」と答えた。

すると午後三時二〇分ころ、松田係長が刑事事務課の部屋に戻ってきた。

原告は、松田係長に対し、「ただ待っていては取調べが終わってしまう。E検事と話がしたいからその旨もう一度E検事に伝えて欲しい。」と言い、更に「Gさんを私に会わせるつもりがないのなら、その理由を聞いてきて欲しい。」と言ったところ、松田係長は「分かりました。聞いてきます。」と答え、E検事室へと向かった。

それから原告は待合室に戻ったが、午後三時三〇分まで待っても松田係長が戻って来なかったので、刑事事務課の部屋に行き、木村事務官に「係長が戻って来ないがどうしたのか。」と聞き、松田係長が戻って来ない旨の答えに対し、木村事務官に対して催促をしてきて欲しい旨述べた。

木村事務官は、原告から原告の名刺を一枚受け取ると、E検事室に向かった。

それから、原告は待合室に戻ったが、午後三時四〇分になっても松田係長も木村事務官も戻って来なかったので刑事事務課の部屋に行き、そこにいた男性職員に対し、「係長も木村さんも戻って来ない。これでは取調べが終わってしまう。」と催促をした。

その男性職員は、「ちょっと見てきます。」と言い、E検事室の方へ歩いて行った。

まもなくして木村事務官が刑事事務課の部屋に戻って来て、原告に対し、「係長の方からメモを入れてあなたの伝言は伝えてある。係長は部屋の前でE検事の返事を待っている。」と述べた。

そこで、原告は木村事務官に対し、「ここまで待ってもらちがあかないのであれば仕方がない。私の方から係長に催促に行く。」と言い、松田係長のいるE検事室前に向かった。木村事務官も原告と一緒にE検事室前へと向かった。

(6) 原告が松田係長をE検事室前で見つけ、松田係長に「まだですか。」と問い合わせたところ、松田係長は、「今検事の返事を待っているところです。」などと返答した。

そこで、原告は松田係長に対し、もう既にかれこれ一時間も待たされていることを述べ、いつまで待てばよいのかという質問をした。

松田係長は、「でも取調べ中ですからねえ。」と答えた。

原告はそれに対し、Gは起訴後の身であること、自分がその弁護人であることなどを話した。

原告は、E検事室前のドアを「トントン」と二回ノックした。しかし、中から返答はなかった。そこで、原告はもう一度「トントン」とドアをノックし、「ご免下さい。」と声をかけた。

すると、部屋の中から奥山事務官が出てきたので、原告は自分の名前を名乗ってE検事と会いたい旨伝えた。

奥山事務官は、部屋に一旦入ったが、直ぐに出て来ると原告に対し、「検事は取調べ中なので。」と答えた。

原告は奥山事務官に対し、自分がその現在取調べ中のGの弁護人であること、Gと接見しに来たこと、二時過ぎにE検事と電話をしてからずっと取調べ中を理由に会えないでいること、起訴後の勾留中なのだから取調べは認められないし弁護人が接見できないわけがないこと、E検事は任意の取調べだといっているようだが任意かどうかは確認しないと分からないこと、E検事すら自分と会おうとしないがそれはどういうつもりなのか等と一気に話し、これをE検事に伝えてくれるように頼んだ。

これに対し奥山事務官は「分かりました。」と言ってE検事室に入り、その後E検事室からE検事が出てきた。

なお、前記(1)の点に関し、E証人は、原告からの最初の電話でE検事に対し「Gに会いたい。」旨の申出がされたことはなかったと思う旨の証言をする。

しかしながら、そもそもGとの接見を目的として渋谷署を訪れた原告が、Gが東京地検に押送されたことを知ってから直ちに掛けたE検事への電話において、原告が当初の目的であったGとの接見の申出をしなかったとは容易に考え難いところである。E証人の右証言は反対趣旨の原告本人尋問の結果に照らし、採用することができない。

(二) 以上右(一)認定によれば、原告は、午後二時一三分ころ、E検事及び奥山事務官に対して、渋谷署からの電話でGとの接見を申し出ていること、並びに、午後二時四六分ころから午後三時四〇分ころまでの間、東京地検において、青山事務官、木村事務官及び松田係長に対し、Gとの接見を求める発言を繰り返していたことが認められる。

(三) ところで、被告は、四月二二日当日の東京地検における原告の一連の要求行為は、Gとの接見の申出ではなく、E検事によるGの余罪取調べを阻止する目的でE検事との面会を求めた行為に過ぎない旨を主張する。

確かに、本件においては、原告は東京地検においてGとの接見を求める発言を繰り返す一方で、E検事との面会を求める発言を繰り返していたことも事実である。

しかしながら、Gとの接見申出をしながらその前提としてE検事との面会を求めることは別段その性質上矛盾する行為というわけではないし、前記(一)認定によれば、むしろ原告としては、E検事による余罪取調べについてGが任意の取調べであることを理解していたかどうかを確認するためにGとの接見を申し入れ、その接見を実現させるためにE検事との面会を求めていたものと認められるから、原告が一連の要求行為においてE検事との面会を求めていたからといって、右要求行為がGとの接見申出ではなかったということはできない。

また、右(二)認定のとおり、Gの弁護人である原告からGに会いたいとの明確な意思表示がなされている以上、Gの入管法違反被告事件の弁護人である原告ら三名が当時Gと交替で毎日のように接見していたとか、当日原告が通訳人を帯同していなかったなどの被告が主張する事実は、原告の要求行為が接見の申出ではなかったことの理由となり得るものではない(なお、当時Gは日本に三年以上も滞在していたことからすれば(甲二)、Gとは通訳人がいなくてもある程度は内容のある接見が可能であったと思われる。)。

(四) 以上のとおり、四月二二日、原告からE検事に対してGとの接見申出があったことは明らかである。

2  原告の接見交通権

原告は当時、Gの入管法違反被告事件について弁護人であったから、Gと接見する権利(刑事訴訟法三九条一項の接見交通権)を有していた。

この点被告は、原告は自己が弁護人となっている入管法違反被告事件に関してGと接見しようとしたのではなく、その余罪である本件殺人事件に関してGと接見しようとしたものであり、一般に弁護人の選任は事件単位になされるべきであることに照らすと、本件の原告には刑事訴訟法三九条一項所定の接見交通権は否定されるべきであると主張し、また更に、原告の接見交通権は入管法違反被告事件の弁護人として被告人と接見する権利であるが、原告が右権利の行使であるとして、E検事のGへの任意取調べを強引に妨害した上に接見交通に藉口して取調べの中止を求めたのは、権利の濫用である旨の主張をする。

しかしながら、身体の拘束を受けている被告人の弁護人は、原則として自由に被告人と接見することができるのであって、刑事訴訟法三九条は、被告人の逃亡や罪証の隠滅に関わるような場合を除いては、その接見の目的及び内容に何らの制限も加えていない。更に、刑事訴訟法三九条一項所定の接見交通権が憲法上の保障に由来する弁護人の重要な権利であることをも併せ考慮すれば、弁護人が接見の申出をする際に予定していた接見内容如何により、その接見交通権が否定されたりその行使につき他の場合と異なる制約が生じるものと解することはできない。

したがって、本件における原告のGとの接見の目的が余罪の取調べについてのGの意思確認にあったとしても、入管法違反被告事件につきGの弁護人であった原告は、当時身体の拘束を受けている被告人であり余罪につき逮捕、勾留されていたわけでもないGと自由に接見する権利を有していたというべきであって、一般に弁護人の選任が事件単位になされるものであるということは、右判断に何ら影響を及ぼすものではない。

また、前記1(一)認定のとおり、原告は当日、約一時間にわたって東京地検の検察事務官らにGと接見させるようE検事に伝えてくれとの申し入れを繰り返した後に、ようやくE検事室にE検事を訪ねたものであって、かかる経緯に照らせば、原告の接見申出の態様が濫用的なものであったということもできず、他に、原告の接見申出が権利濫用に当たると目すべき事実を認めるに足りる証拠はない。したがって、被告の右権利濫用の主張も理由がないものである。

3  E検事の行為の違法性

(一) 被告は、E検事が最初に原告からの接見の申出に接したのはE検事室前で原告が初めてE検事と面会した時であり、E検事はそれから直ぐにGと接見施設のある渋谷署に帰したので、E検事の所為は原告の権利を侵害するものでない旨主張する。

しかしながら、前記1(一)(1)で認定したように、原告は渋谷署内からの電話でE検事に対し直接Gと接見したい旨述べていたのであるし、確かに、右電話の他には原告とE検事室で面会する以前にE検事が原告のGとの接見申出に直接に接したというような事実は認められないものの、右電話の際に原告は奥山事務官に対してもGと接見したい旨述べていること、E検事室へ行った後に待合室の原告のところに戻ってきた青山事務官が原告に対して、「E検事は取調べが終わったら会わせると言っている。」と言っていたこと、原告の接見申出等に対して、刑事事務課の木村事務官や松田係長は「検事には話はしてあります。」「係長の方からメモを入れてあなたの伝言は伝えてある。係長は部屋の前でE検事の返事を待っている。」「今検事の返事を待っているところです。」などの返答をしていたことからすれば、それぞれの各時点において原告のGとの接見申出がE検事に対して伝えられていたことは容易に推認できる。

更にいえば、E検事は、渋谷署の原告からの電話の直後に、やはりGの弁護人である神田弁護士からGと接見したい旨の内容の電話を受けていたのであるし、また、当時E検事は、少なくとも自分が現在取り調べているGの弁護人が自分の所へ電話してきた直後に東京地検に来庁して自分との面会を求めていること自体は知っていたのであるから(E証人)、そうであれば、原告が東京地検に来庁してGとの接見申出をしていたことについて、E検事が当初から当然に認識していたであろうことは容易に推測できるところである。

したがって、E検事室前で原告とE検事が初めて面会する以前から、E検事が原告のGとの接見申出に接していたことは明らかであって、被告の右主張はその前提を欠き、採用することができない。

(二)  一般に、公訴提起後の被告人についてその余罪取調べ中に当該被告事件の弁護人から接見申出を受けた捜査機関としては、当該余罪被疑事件について被告人が逮捕、勾留されているというような場合であれば格別、そうでない限り、可及的速やかに接見実現のための措置をとるべきであるところ、本件においては、E検事は原告がGとの接見を要求していることを知り、更に原告が東京地検へ来庁したことを知った時点でGの余罪の取調べを一旦中止して、原告と面会して原告の接見申出を確認し或いは更にGの意思を確認した上で、速やかに原告とGとの接見を実現させるべく、原告らが東京地検地下の弁護人接見室を利用できるように手配すべき義務があったというべきである。そして、最初に原告がE検事と電話したのが午後二時一三分ころであり、その後原告が東京地検に来庁して受付からE検事室と連絡を取ったのが午後二時四六分ころであるから、E検事において地下の弁護人接見室の利用時間内に原告とGとの接見を実現させることは十分に可能であったことは明らかである。

ところが実際は、午後四時ころにGの取調べを終えるまで、原告が東京地検に来庁してから一時間以上もの間、E検事は、自分が現在取り調べているGの弁護人である原告が来庁して自分との面会を求め、そしてGとの接見を申し出ていることを知りながら、右申出を無視して、Gの余罪取調べを続けていたというのであるから、E検事の右所為は、原告の接見交通権を違法に侵害する行為といわざるを得ないものである。

二  争点(原告の損害等)について

被告はE検事をして公権力の行使に当たらせていたものであるから、国家賠償法一条一項により原告の被った損害を賠償すべき責任があるところ、これまでに認定した一切の事情を斟酌すると、原告がE検事の接見妨害の違法行為により被った精神的苦痛に対する慰謝料は三〇万円が相当であり、右違法行為と相当因果関係のある弁護士費用としては五万円が相当であると認める。

三  以上の次第で、原告の請求は主文第一項の限りで理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、仮執行の宣言はその必要が認められないからこれを付さないこととして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官梶村太市 裁判官増森珠美 裁判官大寄久)

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